ジョブ型雇用とは?企業視点のメリット・デメリットも解説

公開日:2025/04/25 最終更新日:2025/04/25

ジョブ型雇用とは?企業視点のメリット・デメリットも解説
「ジョブ型雇用」という言葉が注目を集めるようになった背景には、企業の人事制度が大きな転換期を迎えている現状があるといえます。これまでの日本企業では、職務の範囲を限定せず総合職として一括採用し、長期的に育成する「メンバーシップ型雇用」が主流でした。しかし、グローバル化やテクノロジーの進展にともなって、専門領域で優れた能力を発揮する人材を的確に配置し、成果を最大化する仕組みが求められるようになっています。 環境の変化に合わせて、人事担当者をはじめとする多くの企業関係者が、ジョブ型雇用に興味を持つようになっています。この記事では、ジョブ型雇用の基本的な概要と、企業がなぜこの制度を導入しようとしているのか、働く人と企業視点でのメリット・デメリットについて解説します。

ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用とは、あらかじめ定義した職務内容や責任範囲(ジョブディスクリプション)をベースに、従業員を採用・評価・処遇する仕組みを指します。具体的には、「このポジションでは、こうした業務を担当し、これだけの成果を出すことが求められる」という基準を明確にしてから人材を募集し、雇用契約の段階で「業務の範囲と期待される成果」を取り決める点に特徴があります。たとえば、ITエンジニアとしてサーバー構築を担当する人材を募集するときには、サーバーの設計や運用に必要なスキルと実務経験を細かく定義し、それを満たす人材に的確な報酬を支払うことで、企業と従業員の双方が納得しやすい雇用関係を築くことが可能です。
従来の日本企業で多く見られたメンバーシップ型雇用と大きく異なるのは、社員のポテンシャルや将来性に期待して一括採用するのではなく、最初に職務範囲と成果目標を明文化し、そこに合致する能力を持つ人材だけを迎え入れるという点です。新卒入社の学生にとっては、自身の適性ややりたい仕事を十分に理解する前に配属されるリスクが減るという利点も考えられますが、同時に職務や評価基準が厳格に設定されることで、ミスマッチが起きた場合のフォローが難しいという側面もあります。 それでも、採用段階から自分の仕事の中身が明確になることで、専門分野でキャリアを積みたいビジネスパーソンや企業側の戦略がはっきりしている場合には、大きなメリットを生む制度として期待されています。

ジョブ型雇用 メンバーシップ型雇用
採用基準 業務経験、スキル ポテンシャル(新卒一括等)
評価方法 業務への成果 勤続年数や組織への貢献、業務への成果
報酬体系 職務により変化 勤続年数等により変化
社員のキャリア形成 職務に応じたキャリア形成 勤続年数・年次に応じたキャリア形成

ジョブ型雇用が注目される理由

ジョブ型雇用が注目される理由は以下のとおりです。
  • 少子高齢化による人材不足
  • 優秀な人材確保のため
  • キャリアアップを重視する求職者が増えた
上記の理由を以下で詳しく解説します。

少子高齢化による人材不足

ジョブ型雇用が注目され始めた背景の一つに、国内の少子高齢化による労働力不足が挙げられます。従来の総合職一括採用の方法では、年齢に関わらず大量の若手人材を毎年確保することが前提でしたが、働き手が減少傾向にある今、企業は必要なスキルを持つ人材を点で押さえにいくことが求められています。


出展:内閣府(2022)「令和4年版高齢社会白書」

総務省が公開しているデータによると、生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少しています。今後はさらに減少傾向が加速していくとみられ、採用手法の見直しが始まっています。
単に「若い」という理由だけで採用していた時代が終わりつつあり、企業は即戦力として貢献してくれる人を明確に定義した上で採用しなければ、競争の激しい市場を生き残れなくなりました。そこで、担当業務を細分化し、確実に必要なポジションだけを埋めるというジョブ型の仕組みが、労働人口が減少し続ける社会にフィットすると考えられています。

優秀な人材確保のため

海外市場を視野に入れる企業や、ITを活用したサービスを展開する企業では、特に高度なスキルを持つ人材を狙って採用したいニーズが強く存在します。たとえば、データサイエンティストのように専門性が高く希少な人材は、職務範囲を明確にして「あなたにはこの領域でこういう成果を期待しています」と提示しないと、世界中で引く手あまたの人材を獲得するのは難しいでしょう。

そうした観点からも、必要なポジションと能力を明確化したジョブ型雇用は、海外企業との人材獲得競争において、特定の専門家にアプローチしやすい制度設計といえます。優秀な人材ほど、自分の仕事や待遇について納得できる説明を企業に求めるため、業務内容や評価の仕組みがはっきりしているジョブ型雇用は、その意味でも魅力的な選択肢になっています。

キャリアアップを重視する求職者が増えた

現代のビジネスパーソンの多くは、会社に長く居続けることよりも、自分が得意な分野を伸ばして市場価値を高めることを重視し始めています。ジョブ型雇用は、まさに特定の分野で成果を出せば評価や報酬につながりやすい仕組みといえるため、スキルを武器に転職やキャリアアップを図る人たちにとって都合が良いと考えられています。

また、所属企業に頼らず自身の能力を高めることで、将来的にフリーランスやスタートアップへの転職など、柔軟な働き方を選択する余地も広がります。こうした背景から、企業が導入を進めるにあたっても、キャリア意識の高い人材にアプローチしやすくなる側面があるため、ジョブ型雇用の認知度が急速に高まっているのです。

【働く人視点】ジョブ型雇用のメリット

働く人視点のメリットは以下のとおりです。
  • 専門スキルが評価されやすい
  • 成果主義で昇給・昇格のチャンスが増える
  • 転職やキャリアアップがしやすい
  • 働き方の自由度が高まる
上記のメリットを以下で詳しく解説します。

専門スキルが評価されやすい

ジョブ型雇用では、あらかじめ明確化された職務内容や成果目標に基づいて評価されるため、専門スキルを持つ人材は実力を正当に認められやすい傾向にあります。たとえばデータ分析やプログラミング、デザインなど特定の分野で高い能力を発揮できる人は、その得意分野の業務を主体的に任されることで成果を出しやすいです。

日本の従来型雇用であるメンバーシップ型では、年功や総合職としてのジェネラリスト的な働き方が重視されるケースが多かったかもしれませんが、ジョブ型雇用に切り替わることで「自分の強みを仕事にダイレクトに生かせる」というメリットを感じる人も増えています。
こうした評価のされ方は、キャリア形成を「自分の専門性をどう磨き、高めるか」に焦点を置きたい人にとっては大きな魅力となります。自分の得意領域でアピールする余地が増すだけでなく、成果やスキルの伸びがそのまま報酬やポジションに反映されやすくなるため、自分の成長を直に実感しやすい環境といえます。

成果主義で昇給・昇格のチャンスが増える

ジョブ型雇用は、基本的に成果ベースで昇給や昇格が決まります。成果が分かりやすく定義されているので、「どのレベルまで達すれば評価が上がるのか」が明確です。業務範囲もジョブディスクリプションによって定義されているので、与えられた役割をどれだけ高いパフォーマンスでこなせるかが評価の基準になります。

これまでのメンバーシップ型雇用だと、長期間同じ会社で働くことで経験や知識を積み、徐々に昇格していくスタイルが一般的でした。しかしジョブ型雇用下では、スキルアップの速度や成果の出方によっては、年齢や勤続年数にかかわらず短期間で昇給・昇格できる可能性があります。やった分だけ評価されたい、結果を出せば正当に報酬を得たいと考える人にとっては、大きなモチベーションにつながるでしょう。

転職やキャリアアップがしやすい

ジョブ型雇用が広がると、自分の専門スキルや実績が各社から見やすくなるため、転職市場での評価が相対的に高まりやすくなります。企業側も、ジョブディスクリプションを細分化して「どのポジションにどんなスキルセットが必要なのか」を明確にしているため、候補者と採用ニーズをマッチングさせやすいというメリットがあります。

加えて、ジョブ型の考え方が普及するほど「専門分野で実績を積む→さらに高度な専門性を持つポジションへキャリアアップする」という流れが一般化しやすくなります。結果として、個人が自らのキャリアプランを描く際にも柔軟性が増し、転職先や新しい仕事の選択肢が広がっていきます。

働き方の自由度が高まる

職務内容や目標が明確に設定されていることは、働く場所や時間をより自由に選べる環境を整えやすくする一面もあります。リモートワークやフレックスタイムなど、従来の会社都合に縛られにくい働き方を導入しやすいのは、ジョブ型雇用が「成果を出すための最適な方法」を個人の裁量に任せる傾向があるからです。

特に専門性が高い職種では、必ずしもオフィスに常駐する必要がないケースが増えています。時間や場所を選ばずに仕事をこなせることで、自分のライフスタイルに合わせた働き方を実現しやすくなります。もちろんすべての企業や職種がそうなるわけではありませんが、ジョブ型雇用が「自由に働き成果を上げる」という新しい働き方の後押しをしていることは確かです。

【働く人視点】ジョブ型雇用のデメリット

働く人視点のデメリットは以下のとおりです。
  • 職務範囲が限定され、柔軟な対応が求められにくい
  • 成果が出せないと評価が下がりやすい
  • 雇用の安定性が低くなる可能性がある
  • 企業との交渉力が求められる
上記のデメリットを把握していないと、思うような働き方を実現できない可能性があります。

職務範囲が限定され、柔軟な対応が求められにくい

ジョブ型雇用では、一人ひとりに割り振られる職務範囲が明確に定義される一方、そこから外れた業務には携わりにくくなる傾向があります。たとえば、担当外の仕事であっても「手が空いているから手伝いたい」と考えても、職務定義から外れているために動きづらいケースもあります。

日本の従来型雇用でありがちな「総合職として、必要なら何でもやる」という柔軟さが失われやすい側面は、逆に言えば個人の視野を狭めるおそれもあります。結果的に、新しい業務知識やスキルを習得する機会を逃し、キャリアの幅が狭まる可能性がある点には注意が必要です。

成果が出せないと評価が下がりやすい

ジョブ型雇用は成果が明確に求められる分、期待されたパフォーマンスを発揮できなければダイレクトに評価が下がります。従来の日本企業では、チームや上司がフォローしてくれたり、長期的な視点で育成を重視したりする文化が根強く、ある程度の失敗やスランプは個人の評価に大きく影響しないケースもありました。

しかし、ジョブ型は「職務内容における達成度合い」を厳密にチェックする仕組みのため、結果が思うように出せない期間が長引くと、昇給はおろか契約更新に影響が出るおそれもあるでしょう。個人としては、常に高いアウトプットを求められるプレッシャーが生じやすく、自己管理やスキルのメンテナンスが欠かせなくなります。

雇用の安定性が低くなる可能性がある

ジョブ型雇用では、企業が必要とする特定のスキルや業務範囲が明確になり、その需要がなくなれば契約を打ち切られるリスクが高まる可能性があります。メンバーシップ型雇用であれば、部署異動や社内研修を通じて別のポジションに回してもらえるケースも多いですが、ジョブ型では「そのジョブが不要になったら契約終了」となるリスクが否定できません。

この点から見ると、従業員にとっては自分の専門性が常に市場価値を保てるか、企業から求め続けられるかという不安と向き合わなければならない場面が出てきます。雇用の安定を最重要視する人にとっては、ジョブ型雇用の導入がかえって不安材料となることもあるでしょう。

企業との交渉力が求められる

ジョブ型雇用では、職務内容や報酬はジョブディスクリプションとセットで交渉されるのが基本です。自分の仕事の範囲と求められるスキル、それに見合った報酬や待遇を適切に主張するには、企業側との交渉力が必要になります。実績をどのように示すか、どんな条件が自分にとって妥当かをきちんと説明できなければ、企業の提示する条件に流されてしまう恐れもあります。

日本の労働文化は、海外と比べて個人が雇用条件を交渉する機会が少ないと言われてきました。しかしジョブ型雇用が進めば、条件面を自らコントロールする意識がより求められるようになります。自分の専門性や仕事の価値を客観的に示すためのポートフォリオ作成や実績管理など、より積極的なアプローチが必要となるでしょう。

【企業視点】ジョブ型雇用のメリット

企業視点のメリットは以下のとおりです。
  • 優秀人材の確保
  • 流動化する労働市場に対応できる
  • 人事評価や給与テーブルの明確化で社員の納得感が上がる
  • 採用効率が高まる
上記のメリットを把握しておくと、より効率的にジョブ型雇用を活用できます。


ジョブ型雇用を導入するメリット

優秀人材の確保

ジョブ型雇用の大きな利点は、まさに「この仕事ができる人」を狙い撃ちで採用できる点にあります。たとえば、専門的なITスキルや語学力、営業力などが必要なポジションにおいて、あらかじめ職務内容を明確に提示することで、本当に必要な能力を持った人材を効率よく引き寄せることが可能です。

企業にとっては、研修や育成に時間をかけなくとも、一定の即戦力を期待できるため、競合との激しい採用競争においても有利になるでしょう。なかでもベンチャー企業や海外進出に力を入れる企業には、高度な専門性を持つ人材をスポットで確保するジョブ型の仕組みが非常にマッチしやすいと考えられています。

流動化する労働市場に対応できる

市場が変化のスピードを上げ続ける現代では、企業が持つビジネスモデルや必要とされるスキルセットも刻一刻と変わっていきます。そんな中で、従来のように幅広く人材を採用して一律に育成していくスタイルでは、変化に対応できなくなるリスクがあります。

一方、ジョブ型雇用は必要な業務領域をはっきりさせ、評価と報酬も成果に合わせて変化させやすいので、市場ニーズに合った人材を迅速に追加・配置転換できる仕組みづくりにつながります。メンバーシップ型のように「新卒から一括採用してじっくり育てる」というモデルでは追いつかない分野や競争環境において、ジョブ型の考え方は大きな強みを発揮してくれるでしょう。

人事評価や給与テーブルの明確化で社員の納得感が上がる

ジョブ型雇用は、担当業務と必要なスキル、責任範囲をもとに評価や給与を決定するため、社員が「自分は何を求められているのか」「どのような成果を出せば評価されるのか」を理解しやすくなります。これは従来の年功序列や総合職一括採用では得られにくかったメリットです。

曖昧な評価基準や不透明な昇進制度に対する不満が生まれにくくなるので、企業と従業員の双方にとって納得感が高い関係を築くことが期待できます。社員にとっては、自分のキャリアプランに合った業務やポジションを選びやすくなりますし、企業側も適材適所の配置が行いやすくなるため、結果的に生産性やモチベーションの向上につながるでしょう。

採用効率が高まる

ジョブ型雇用では、採用プロセスの段階で業務内容や求めるスキルを明示するため、応募者も企業がどんな人材を求めているのか把握しやすいです。その結果、条件に合わない人が応募してくるケースが減り、面接や書類選考の無駄が減少することが期待できます。これは人事担当者にとって大きなメリットであり、必要とされるポジションに本当にマッチする人材を見極める時間やコストを削減可能です。

また、採用後のミスマッチによる早期離職リスクも下げられるため、長期的に見ても採用活動の効率を大幅に改善できる可能性が高いといえます。人材不足が叫ばれる中、いかに早く、正確に必要人材を配置できるかは企業競争力を左右する重要な課題であり、ジョブ型雇用はその一つの回答として脚光を浴びているのです。

【企業視点】ジョブ型雇用のデメリット

ジョブ型雇用の企業視点のデメリットは以下のとおりです。
  • ジョブディスクリプション作成や評価基準づくりに手間とコストがかかる
  • 社員のモチベーション低下リスク
  • 労務管理や就業規則の改訂に関わる法的リスクがある
以下でそれぞれ解説します。

ジョブディスクリプション作成や評価基準づくりに手間とコストがかかる

ジョブ型雇用を導入する際、まずは職務内容を明確に定義するジョブディスクリプションを作成し、そこから成果を測るための評価基準を策定する必要があります。どの部署でどのような業務を担い、どの水準の成果が期待されるのかを緻密に洗い出す作業は、一度に実行しようとすると膨大な時間と工数がかかるでしょう。従来の雇用制度では社員を幅広く総合職として採用し、その後に配属や育成を行う流れが一般的だったため、詳細な職務要件を個別に設定する機会は限定的だったはずです。

しかし、ジョブ型では業務内容や責任範囲を部署ごと、役職ごとに正確に描き出さないと適正な評価制度も組み立てにくいため、最初の整備段階でかなりのコストが発生します。この負担を軽減するには、専門家を交えてプロセスそのものを最適化しながら進める必要がありますが、専門家に相談すること自体もコストを伴うため、結局は「制度づくりにコストを割ける企業だけがうまく導入できるのでは」という懸念も生まれがちです。

社員のモチベーション低下リスク

ジョブ型雇用は、個々の専門性を活かせるという利点がある一方で、担当業務が過度に限定されてしまうと新たなスキルを身につける機会や横断的なキャリア形成のチャンスが制約される可能性があります。たとえば、従来は部署をまたいだ異動や社内研修で多面的に経験を積めた社員が、特定の職務範囲に固定されることで視野が狭くなり、「ほかの領域にチャレンジしたかった」という意欲を失ってしまうかもしれません。

評価制度が明確になったことで納得感は得やすくなる半面、「この職務範囲における成果を出せなければ昇給や昇進が難しい」というプレッシャーを強く感じる社員も出てくるでしょう。企業側がそれぞれの社員に対して将来的なキャリアパスや自己成長の機会を設計し、適切にコミュニケーションを行わなければ、せっかくジョブ型を導入しても社員の意欲低下や離職率の上昇につながってしまうリスクがあります。

労務管理や就業規則の改訂に関わる法的リスクがある

ジョブ型雇用を導入する場合、従来の就業規則や契約書とは異なる形で業務範囲や賃金体系を明記する必要があります。新たに作成するジョブディスクリプションや評価の仕組みが労働基準法などの関連法規に抵触しないように注意しなければ、後々トラブルになる恐れがあります。

たとえば、成果主義に偏りすぎて残業代の算出方法が不透明になるなど、法令に合わない運用が行われると、社員との間に報酬トラブルや訴訟リスクが高まるのです。こうした法的リスクを回避するには、顧問弁護士や社労士などの専門家のチェックを受けたり、定期的に運用状況を見直してルールのアップデートを行ったりするなどの対策が必要です。つまり、ジョブ型の仕組みを単に作るだけでなく、コンプライアンス面に配慮して継続的に改善を重ねなければ、安全な運用は難しいといえます。

ジョブ型雇用の導入手順

ジョブ型雇用の導入手順は以下のとおりです。
  • 現状分析と目標設定
  • ジョブディスクリプションの作成と評価制度の再設計
  • 社内コミュニケーションと導入後のフォロー
それぞれの手順を以下で詳しく解説します。

現状分析と目標設定

ジョブ型雇用を導入するためには、まず自社の現状を客観的に把握し、実際にどのような業務領域にジョブディスクリプションが必要なのか検討するところから始めるのが大切です。すべての部門を一度にジョブ型へ移行しようとすると、大きな混乱が起きる可能性があります。そこで、どの部署において専門スキルを持つ人材が不足しているか、あるいはどの職種の成果管理を見える化したいのかといった優先度を見極め、具体的な目標を設定するのがスムーズな導入への第一歩です。

新規事業を拡大したいのか、既存部署の生産性を底上げしたいのかといった経営方針と照らし合わせることで、ジョブ型の導入が企業戦略にどう寄与するかを明確にしておくと、現場の納得も得やすくなります。

ジョブディスクリプションの作成と評価制度の再設計

現状分析と目標設定が終わったら、ジョブディスクリプションを詳細に作成し、それを基盤とした評価制度の再設計に取りかかります。ここで重要になるのは、企業が本当に必要とするスキルや成果指標を的確に定義することと、社員にとって理解しやすい形に落とし込むことです。


ジョブディスクリプションの作成ステップ


職務範囲が抽象的すぎると、後から「自分の業務はどこまで責任を負うべきなのか」といった混乱が生じやすく、評価の公平性が損なわれる可能性があります。また、評価の仕組みそのものが複雑になりすぎると、管理コストだけでなく社員の負担も増大してしまうので、シンプルかつ納得感を得られるルールづくりが求められます。評価基準を数値化できる部分はなるべく数値化し、定性的な部分は誰でも同じ基準でチェックできるように工夫することで、社内外からの信頼を高めることにつながるでしょう。

社内コミュニケーションと導入後のフォロー

新しい制度を導入する際には、社内コミュニケーションが欠かせません。ジョブ型雇用に対して理解を深めてもらうためには、全社員を対象とした説明会や、業務の実情を踏まえた質疑応答の場を設けることが効果的です。導入前から疑問や懸念を洗い出し、それに対する解決策を一つひとつ提示していくプロセスが「自分ごと化」につながり、社員の協力が得やすくなります。

さらに、導入後も定期的なフォローアップを行い、ジョブディスクリプションや評価制度が実際に機能しているかをチェックしながら、必要に応じて微調整やアップデートを行っていくことが大切です。一度つくった仕組みをそのまま放置してしまうと、予想外の弊害が出てきたり、社員の不満が蓄積したりする場合もあるので、制度の運用プロセスそのものが改善のサイクルに組み込まれるようにするのが理想といえます。


導入のプロセス

ジョブ型雇用を活用して業務効率を改善しよう

ジョブ型雇用を導入するメリットとして、専門性の高い人材を確保しやすくなるだけでなく、社内の業務フローを整理し、どのポジションにどの仕事を担ってもらうかを明確化できる点が挙げられます。これは既存の部署にも良い影響を与え、チーム間の責任の所在やタスクの分担がスムーズに可視化される可能性があります。そうなると、無駄な重複作業や責任の押し付け合いを減らし、結果として業務効率の改善にもつながるでしょう。

実際に導入する際は、デメリットへの対策を十分考慮して、社員との対話を重ねながら進めることが欠かせません。柔軟かつ戦略的にジョブ型雇用の仕組みを取り入れることで、自社が望む成果を引き出し、長期的に見ても企業と社員の双方が成長できる環境を整備していきましょう。

ジョブ型雇用の一手・技術者派遣

ジョブ型雇用を検討したいものの、ステップが多く不安という企業担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「技術者派遣」という選択もあります。その名の通り、専門的な技術者(エンジニア)ポジションを派遣で補う雇用方法です。
派遣というと、事務職のイメージ強い方もいらっしゃるかもしれませんが、スキルのあるエンジニアの採用も可能です。また、チーム単位での派遣も可能ですので自社に足りない業務部門をまるまる技術者派遣で担うこともできます。
そんな技術者派遣をご検討中の方は、お気軽にトライアローへご相談ください。

トライアローは、しごとF!NDERというお仕事検索サイトを運営するIT・通信・建設業に強い派遣会社です。1979年よりエンジニア業界で幅広い事業を展開してきた当社は、現場の実態や課題を察知し、「人材」という側面から課題解決に貢献してまいりました。

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