公開日:2023/04/14 最終更新日:2023/04/14
基地局は、携帯電話や無線通信などの電波を送受信している場所です。無線通信とは、電波を利用して行う電気通信のことで、ケーブルを利用した通信は有線通信と呼びます。私たちの身近な携帯電話は無線通信を用いて通信をしています。 その通信に必要な電波を送受信する場所を基地局と呼びます。
携帯電話の基地局はBS(ベースステーション)とも呼ばれており、通常、アンテナと送受信機のみが設置されています。1つの基地局で対応できるユーザー数・通信量は決まっているため、利用者が多い人口密集地域や人出が多い場所であるほど、基地局の数も増えると考えてもよいでしょう。 総務省の令和3年版「情報通信白書」によると、スマートフォンの利用率は89.4%で、ノートパソコンの利用率が48.5%、デスクトップパソコンが20.9%です。この結果からインターネットに接続する際、パソコンやタブレットよりスマートフォンを使用している人が多いとイメージできます。特に20~30代のスマートフォンの利用率は95%前後と多いです。40~50歳代は90%弱、60代以降も81.0%と非常に高い普及率であるといえます。こういった状況からも携帯電話の基地局が非常に重要であるといえるでしょう。
5G、6Gとは、それぞれ第6世代移動通信システム、第6世代移動通信システムと呼ばれる高速かつ大容量、低遅延、多数接続を持った通信方式です。5Gは現在実装が進んでいる通信方式で、通信速度は4Gの100倍ともいわれています。5Gにより、スムーズな動画視聴などが可能になりました。 6Gは2030年に導入予定で開発が進んでいる新たな通信システムです。もしかなえば、5G の以上の高速大容量化、低遅延、多数同時接続など通信のさらなる高度化が見込まれます。
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携帯電話をかける際に発信された電波は近くの基地局Aが受信し、さらに電話の受信相手の近くにある基地局Bに送信されます。基地局Bが電話の受信相手に電波を送信することで通話をすることが可能です。基地局と基地局の間には交換局という中継点があり、基地局から交換局、交換局から基地局への電波は光ケーブルによって信号に変換されます。つまり、発信者から基地局A間は電波、Aから交換局間、交換局から基地局B間は信号、基地局Bから受信者間は電波に変換されるというわけです。1つの基地局から電波が届く範囲を「セル」と呼び、先ほどの基地局A、B…など数多くのセルで全国をカバーする「セル方式」という通信方式をとっています。
基地局に設置されているアンテナは、無指向性アンテナと呼ばれます。これは、全方向に対して電波を送受信できるアンテナのことです。対となるのが指向性アンテナと呼ばれるもので、一定方向に対して電波を送受信します。指向性アンテナの方が一定方向からの受信強度は強くなりますが、無指向性アンテナは360度平均的な受信強度があります。 基地局では、無指向性アンテナを使用しているため、建物が少ない郊外では広範囲に対応している基地局を設置しますが、都会など大きな建物が多い場所では小さな基地局を多く設置し、狭いセルでも不都合がないようにしている状態です。通信品質が良い携帯キャリアほど基地局の数が多かったり、エリアに適したセルだったりします。大手キャリアは常に基地局の増加をするなどして対応しているため、年々通信状態がより良いものになっているといえるでしょう。
基地局のアンテナは「鉄塔タイプ」「ビル設置タイプ」「小型基地局」「屋内基地局」の4種類があります。こちらでは、それぞれのアンテナについて解説します。
鉄塔タイプは20~50mほどの高さがある鉄塔で、主に郊外の見通しが良い場所に設置されていることが多いです。鉄塔タイプのセルは半径3~6kmと広範囲になっています。郊外には大きなビルなどがほとんどありません。そのため、高さがあり、独立している鉄塔は目立ちます。大手キャリアによっては鉄塔の足元に基地局の名前が記載されたプレートがあるので、どのキャリアのものなのかが一目でわかるのが特徴です。
ビル設置タイプは、ビルやマンションなどの屋上に設置されているアンテナです。都心部や市街地などビルが集まっている場所に設置されています。セルは半径1~3kmほどです。ビルの屋上に設置しなければならないので、地主に設置場所を借りるという形になります。ビルなどの屋上には貯水槽があるケースが多いですが、それ以外に活用されていない所も少なくありません。 このような空きスペースを活用するひとつの方法として携帯電話の基地局として貸し出し、その賃料で収入を得るというものがあります。屋上の遊休スペースを携帯電話の基地局として活用できるように、携帯電話会社が検索する専用サイトもあるため、ビルの所有者も積極的に基地局設置に協力するケースが多いです。
小型基地局は主に電柱に設置される小型かつ軽量のアンテナで、コンクリート柱タイプと呼ばれることもあります。セルは半径200~500mほどで小規模エリアが対象となるため、住宅地のような狭い範囲に設置するものです。住宅地では自宅にいる際にスマートフォンを利用する人が多く、電波が届いていてもうまく通話や通信ができないときがあります。これは1つの基地局で送受信できるデータ量に限度があるからで、住宅地のような密集地域では1つの基地局に送受信されるデータが集中しがちです。それによって携帯電話を利用しづらい環境になることから、小型基地局の設置数を増やし、いつでも利用しやすい状態にしています。
屋内基地局は電波が届きにくい場所に対応するために設置されるアンテナで、セルは半径30mほどです。電波が届きにくい場所とは、具体的には地下街や地下鉄の駅、大型ビルの地下、高層フロアなどが挙げられます。屋内にいる場合も原則として屋外にある基地局が利用されていますが、それだけではカバーできない場合もゼロではありません。屋外基地局の対応外エリアや地下フロア、周囲に高い建物があると通信が悪くなってしまいます。そのような場所でも安定した通話・通信ができるように設置するのが屋内基地局です。
基地局の設置場所については公表されていません。ただ、地域別の設置数については総務省の「電波利用ホームページ」で、かんたん検索から検索できます。たとえば、地図で探す場合は都道府県モードあるいは市区町村モードで検索できます。また、「目的で探す」から「目的で検索の条件一覧」ページを開き、無線局の種類を「基地局(PHS除く)」、無線局の目的を「電気通信業務用」、調べたい都道府県を設定して検索すると確認可能です。周波数帯で5Gの基地局を検索できるので、その場合は周波数を4000MHz~に設定しましょう。
携帯電話基地局のアンテナが人体に影響を与えないかどうか気になる人もいるかもしれません。アンテナについては人体に影響を与えない基準値以下になるように電波の出力を抑える規制「電波防護指針」が設定されています。そのため、この点では十分な安全性が考慮されているといえるでしょう。たとえば、基地局が屋上に設置されているとして、基地局の真下に発信される電波はほとんどありません。また、基地局から50mほど離れた地上でも基準値の約1万分の1、200m離れた地上では基準値の約1000分の1です。 アンテナの周囲に住んでいる場合でも、基準値をはるかに下回る数値なので健康面への影響は過剰に心配する必要はないといえます。電波は壁・屋根といった障害物に吸収・反射されるので、屋内にいれば影響を受ける電波の強さはさらに弱くなると考えられるでしょう。ただ、基地局からの電波による発がん性などについては「誘発・促進されにくい」といわれているものの、証拠は不十分であるといわれています。
携帯電話の基地局に関わる職種を、移動体通信エンジニアと呼びます。仕事内容は、建設や運営、保守など多岐にわたります。電話が圏外だったり、電波が弱かったりする場所がありますが、そういった場所にもきちんと電波が届くように、設置にふさわしい場所がないかを探すのも基地局に関わるエンジニアの仕事です。良さそうな場所が見つかっても自由に設置はできないため、土地や山、建物などの所有者と交渉しなければなりません。このように安定した通信を提供できるように、情報インフラを維持するのは重要な役割といえます。 さらに、携帯電話は4Gから5Gへと変化しており、2030年頃には6Gまで提供される予定です。今後も新たな通信方式の開発が進むとみられており、基地局に関わる仕事の需要は将来性があるといえるでしょう。
基地局に関わる仕事について詳しく知りたい方はこちら
携帯電話は4Gから5Gへ、さらに6Gへと変化していくため、基地局に関わる仕事は将来性があります。また、携帯電話の普及率の高さを考慮すると非常に重要な役割を果たしているといえるでしょう。 トライアローは通信・IT・建設業に強い技術系の派遣会社です。 基地局の建設・運営、保守といった仕事を多く紹介しています。興味がある方はお気軽にお問い合わせください。
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